〔弁護士 藤澤頼人〕

この週末、ある映画を見てきました。
以前から見てみたいと思っていたのですが、ちょうどイギリスの国民投票の結果も出たことですので、行ってきました。

映画のタイトルは、「帰ってきたヒトラー」です。

あらすじですが、次のようなものです。
ヒトラーが自殺直後(寸前?)にタイムスリップし、現代で目覚めた。テレビ関係者の目にとまったヒトラーは、ドイツを巡りながら人々の考えや不満を聞き、テレビに出演して大まじめに話しをするが、ヒトラーをテレビに出した本人を含め、人々はヒトラーの物まね芸人として受け取り、本気にしない。やがて・・・というものです。

ヒトラーが劇中で人々と意見交換する場面などはドキュメンタリータッチで描かれていますが、主演の方のインタビュー記事によると実際に街の人とアドリブで会話したようです。

さて、この映画ですが、コメディーとして作られているようです。

実際、クスッと笑える場面や、ヒトラーを扱った映画の有名な一場面をパロディ化した場面などがあり、映画館では、かなり大きなクスクス笑いが起きていました。

ですが。

劇中で描かれた人々の生の声は、冗談ではありません。イギリスでは移民の増加も原因として、EU離脱が決まりましたが、ドイツでも、移民や社会に対する不満が渦巻いているようです。映画では、ヒトラーの扮装をした人物と街の人が、一緒に記念撮影に及んだり、さらには人種問題や移民問題の会話をするという、衝撃的な場面も描かれていました。もちろん、映画の構成上、そうした場面をあえて取り出したと思いますので、そうした部分が強調された面はあると思います。しかし、それを考えに入れても、なお、その様は想像以上でした。

私は、ヒトラーやナチズムに対するドイツ国民の忌避感は未だ強烈だと思い込んでいましたが、どうやら間違っていたようです。

ドイツでは、原作となった小説とともにこの映画も大ヒットとなったようです。どこに人々は惹かれたのでしょうか。

この映画の「笑い」の部分を理解するために見ておいていただきたい映画をご紹介して終わりとさせていただきます。ある一場面のパロディーが作られて世界的に有名になりましたが、映画本体には笑いの要素はありません。
『ヒトラー 〜最期の12日間〜』