〔弁護士 北岡秀晃〕
「大統領就任初日にTPPから離脱を宣言する。」と公言したトランプ氏が次期アメリカ大統領に当選しました。レームダック化したオバマ大統領や、共和党が多数を占めるとはいえ1月初めまでの任期しかない議会(レームダックセッションと言うそうです。)が、TPPを承認する可能性は限りなくゼロです。参加国全体のGDPの6割を占めるアメリカが批准しないと、TPPは発効しません。農業はもちろん、医療をはじめ弁護士の業界への影響も懸念されていたTPPが、意外な形とは言え「終わった!」ことは朗報と言えます。
ところが、そのような大統領選挙の結果が出た翌日、日本の国会では、TPP承認と関連法案が、すったもんだの末、衆議院本会議で可決されました。今後、参議院の審議を経て批准するつもりかも知れませんが…。いかにも滑稽です。
他方、昨年12月15日にCOP21で採択されたパリ協定は、アメリカ、中国やEUの加盟国等の批准を経て、本年11月4日に発効しました。ところが、こんなに早く各国が批准するとは予想していなかった日本政府は、批准の手続に遅れをとり、COP22で行われる締約国の会合に、オブザーバーとしてしか参加できないということになりました。いかにも、情けない話です。TPPとパリ協定、優先順位の判断と情勢分析を誤った結果と言わざるを得ません。
ところで、この「批准」という言葉。重要な条約は批准が必要です。「批准」とは、既に署名又は採択がなされた条約に拘束されることを国家が最終的に決定する手続といわれています。
日本の憲法上、条約の締結は内閣の権限とされていますが、条約を締結することにつき国会の承認が必要とされています。国会の承認を得て、内閣が批准を決定し、天皇が認証した批准書を交換し又は国際機関に寄託することで国際的に確認されるということになっています。
ちなみに、パリ協定は、ようやく11月8日に国会承認がなされ、同日、批准が閣議決定されました。衆議院や参議院のHPによれば、審議日程は衆参それぞれ2~3日程度に過ぎません。何とも滑稽で情けない話です。