〔弁護士 北岡秀晃〕

NHKのFMを聞いていて、「Dead Presidents」という曲の話を聞きました。死んだ大統領というのは、ドル紙幣のこと、その肖像を指しているという話です。

調べてみると、確かに、現在発行されている1ドル札はジョージ・ワシントン(初代大統領)、2ドル札はトーマス・ジェファーソン(3代大統領)、5ドル札はエイブラハム・リンカーン(16代大統領)などとなっています。ほかにもハミルトンとかフランクリンとか、大統領ではなかったもののアメリカ建国の父と呼ばれる人がドル紙幣の肖像となっています。ちなみに、フランクリン・ルーズベルトやJ・F・ケネディなど新しい大統領は紙幣ではなく、硬貨となっています。このようにアメリカでは、紙幣の肖像は圧倒的に大統領や建国の父に限られており、今ようやく、白人男性以外の女性や黒人の肖像のドル紙幣を導入する方向にあるということです。

これに対し、日本の円紙幣の肖像は多様です。古い話では、神功皇后、菅原道真、武内宿禰、和気清麻呂、藤原鎌足などはともかくとして、聖徳太子以外で記憶に残るところでは、板垣退助、伊藤博文、岩倉具視など明治維新やその後の時代に活躍した人が多いようです。福澤諭吉、新渡戸稲造、夏目漱石、野口英世など、政治家以外の人物も多く、バラエティーに富んでいます。さらに女性も、樋口一葉のほか、紫式部の肖像まであります。

大統領を尊敬し、お札の肖像とするアメリカ。他方、政治家はむしろ少数で、文学や思想、文化その他の面で活躍した偉人を尊敬し、お札の肖像とする日本。調べてみると、歴史の違いもあるのでしょうが、お国柄が出ていて面白いですね。

ちなみに、ドル紙幣を発行しているのは、アメリカ国内に12行ある連邦準備銀行。これを集中的に発券管理しているのがFRB(連邦準備制度理事会)だそうです。

他方、円紙幣は、ご存知「日本銀行券」と言われるとおり、中央銀行である日本銀行が発行していますが、印刷・製造は国立印刷局という独立行政法人が担当しています。