〔弁護士 中谷祥子〕

先日、私が未成年後見人をしていた子どもが成人しました。

未成年後見人とは、簡単に言うと、何らかの事情で親権者がいない子どもについて、
成人になるまでの間、親権者の代わりをする立場です。

「親代わり」とは言っても本当の「親」ではない。
この微妙な立場ゆえに、私には、どこかに一歩引いた気持ちがありました。

ところがあるとき、どうしてもここでその子を抱きしめたいと思い、
気づいたらそうしていたことがありました。不思議な感覚でした。
私が本当の意味で「親代わり」の自覚を持つことができた瞬間でした。

そこから、私とその子の関係性は、はっきりと変わっていったような気がします。

実際には、本当の「親」のようにすべてをできたわけではないですし、
その子が私に言えずに悩み苦しんでいたこともあったでしょう。

それなのに、その子は、最後の引き継ぎのとき、
「私は、弁護士が、中谷さんが、未成年後見人でラッキーだったなぁ。」
と言ってくれました。

そして、私たちは、別れるとき、
どちらからというわけでもなく、自然と抱き合っていました。

成人になって、私とその子の法的な関係は終わってしまいました。
ここからが、本当の絆が試されるときなのかなと思っています。
私は、その子が、いつも笑顔で健康で愛に包まれて過ごせるよう、
一人の大人として、これからも見守っていきたいです。
その誓いの意味も込めて、ここに記しておこうと思います。